アスリートのフィジカル強化と高齢者の歩行改善に共通する取り組みの方向性

姿勢改善により重心位置を引き上げ身体パフォーマンス向上を図る

 

コンタクトスポーツや武道等で日本人選手が欧米の選手と試合をする時の当たりの弱さ(フィジカルの弱さと表現される場合も有ります)が話題に成る事が有ります。

フィジカルの弱さを生み出す要因の一つとして人種による姿勢(骨格)の違いが指摘される事が有ります。

骨盤が前傾している欧米やアフリカ系(黒人)の選手と比較すると日本人選手は骨盤が後傾(膝が曲がり骨盤が後ろに転び腰や背中が丸く成っている様な状態)している選手が多いとされています。

骨盤が後傾する事で身体の重心位置(質量の中心=静止して起立した姿勢では第2仙椎の前方辺り=おへその下辺り)は本来の理想的な正しい位置から下に下がり身体の後方へ移動してしまいます(骨盤が過度に前傾している反り腰も同様です/姿勢を改善して正しく骨盤を前傾させる事が出来ますと骨盤後傾や反り腰と比較して骨盤⦅身体の重心位置⦆が身体の前方の高い位置へ移動します)。

 

例えばサッカー等でボール争いをしている様な状況でボール方向に踏み込み身体(体幹)を相手にぶつける様な場合、骨盤が前傾している欧米の選手は身体の重心位置が身体の前方の高い位置に有る為重心移動が先行し体幹から強く身体をぶつけて行く事が出来るのですが、骨盤が後傾している日本人選手は身体の重心位置が身体の後方の低い位置に有る為、足の踏み込み動作が大きく先行し体幹(身体の重心位置)がぶつかる場所から若干離れた場所へ残ってしまう為当たりが弱く成ってしまうと言うイメージです(当たり負けしない為には体幹の肩甲骨や骨盤、股関節を固めずに柔らかく動かせる事もバランス保持の面からは重要に成りますが今回のテーマからはお話が少し外れてしまいますので次の機会にご説明させて頂きます)。

サッカーの様な競技ではボール捌き等で足から足へのスピーディーな荷重の移し替えや素早い脚の振り出しが要求される場面も多いですが身体の重心位置が高い事はスピーディーに足から足へ加重を移し替えたり素早く脚を振り出す事にも有利に働きます(サッカーに限らず素早いステップワークが要求される様な競技に於いても同様です/身体の重心位置が低く安定していると言う事は裏を返せば速い動きには不利と言う事です/骨盤後傾や反り腰で身体の重心位置が低く成ってしまっている様な状態は動作的視点で見た場合安定している状態とは言えませんが…)。

 

陸上競技のスプリント種目や長距離走でも走りの効率を上げる為に身体の重心位置を身体の前方の高い位置へ保ったフォーム(腰の高いフォーム)を習得する事は重要なテーマとされています。

スプリント種目では限られた瞬間的な接地時間の中で大きな地面反力を得る必要が有る為、着地足の真上に身体を素早く乗り込ませる動作が必要に成りますが骨盤後傾や反り腰の様に身体の後方の低い位置に身体の重心位置が有る姿勢ではその様な動作自体が困難に成ってしまいます。

長距離走では身体の重心位置が低い姿勢(腰が落ちたり引けた姿勢)は位置エネルギー(物体を地面に落とす場合、高度が上がる程大きなエネルギーを得て地面に強く衝突する)を効率良く得て地面反力を得る動作に繋げ難く(低い場所から地面に着地するので大きなエネルギーを得る事が出来ない)筋肉が必要以上に強く働かなければ成らず(筋肉の負担が大きく)非効率な走りに成ってしまいスタミナの大きなロスに繋がってしまうとも言われています。

 *自転車で坂道を登る例が分かり易いかと思います。サドルからお尻を上げて立ち上がり高い所からペダルを踏み込む様にすると大きな力を出す事が出来、且つ疲労も低い位置から踏み込むよりも少なく成る事と似たイメージです。

 

*正しい位置に重心(骨盤)を収めて立つ事が出来ますと、重力に対して骨格で身体を支える事が出来、筋肉の緊張が非常に少ない(最小限の)状態に成ります。具体的な重心の位置やその為の細かな身体の扱い方のポイント等はトレーナー相星へお尋ね下さい。

 

補足(姿勢と呼吸の関係について)

 

 骨盤の角度の違いから来る姿勢の違いは呼吸動作にも大きく影響する部分です。

骨盤後傾は下腹部の内臓が硬く詰まり背中も丸く成って固定されている様な状態ですので横隔膜が下がり難く肋骨も上がり難い状態の為吸気時の肺を膨らます動作の障害に成ってしまいます。

反り腰は下腹部が後方へ引っ張られ固定されてしまい背中も後ろに反って固定されている様な状態ですので横隔膜が上がり難く肋骨も下がり難い為呼気時の肺が萎む動作の障害に成ってしまいます(呼吸はガス交換ですので二酸化炭素を吐き出さないと身体は酸素を受け取る事が出来ません=呼気の動作も非常に重要です/精神的な問題から過呼吸を起こしてしまう小学生の女の子に空手を指導していた経験が有りますが彼女の姿勢は反り腰気味でした)。

当施設でトレーニングに取り組まれますと呼吸が深く楽に成りますが、必要以上の神経の緊張と姿勢が改善される事が主な理由です。

 

 

高齢者の歩行改善

 

ご高齢の方の歩行改善の取り組みでも姿勢改善により身体の重心位置を身体の前方の高い位置へ引き上げて頂く方向性はアスリートのフィジカル強化の取り組みの方向性と同様です。

 

年齢を重ねると多くの方は膝が曲がって骨盤が後傾または過度な前傾(反り腰)に成り身体の重心位置が下がり後方に移動する傾向に有ります。

地面に効率よく力を伝え、反発の力を効率よく得て歩行の為の力を生み出す動作(歩行の際片足に掛かっている荷重は体重の約3倍とも言われています=この大きな荷重を歩行の為の力⦅エネルギー⦆に効率良く変換出来るかどうかが歩行動作改善に於ける大きなテーマに成ります)、スムーズな脚の振出、更にはつまずかない為の振出足と地面とのクリアランス(距離)の獲得等も骨盤後傾や猫背、反り腰や膝の曲がり等の姿勢の改善が先ずは取り組みの中心に成ります。

姿勢改善と共に歩行動作とのバランスの取れた筋力向上等に取り組んで頂く場合も有る訳ですが動作的視点を欠いた取り組みで下半身等部分的筋肉の筋力強化に取り組んで頂いても歩行パフォーマンスの改善や強化には中々繋がりません。

 

*筋力向上の取り組みも拮抗する(反対の働きをする)筋肉同士が同時に収縮(力んで動きが悪い状態=筋力をロスする状態=神経機能の低下でご高齢の方に多い状態)する事を改善したり筋肉の柔軟性獲得(柔軟な筋肉は収縮し易くも有る為)等その他様々な角度から考察し取り組む必要が有ります。お身体の状態は皆さんそれぞれ異なりますのでただ単に筋肉に負荷を掛ければ全てが解決出来ると言う様な単純なお話しには成りません。

 

 

重心位置の高い柔軟な身体は重心位置を下げたパワフルな動作も可能にする

 

当施設の姿勢改善の取り組みでは上半身のトレーニングと共に骨盤後傾で有れば腿裏のハムストリングス、反り腰では骨盤前側の大腰筋等を中心とした筋肉の柔軟性を引き出して頂きます。

骨盤や股関節の動き、関節可動域、周辺の筋肉の柔軟性等も大きく改善される事から重心を低く落として構えたり、低い姿勢で身体を安定させて大きな力を生み出す動作が要求される様な競技(野球、バレーボール、相撲、格闘技、スキー、スピードスケート、サーフィン、モーターサイクルスポーツetc.)に取り組まれている方達にも非常に有効なトレーニング方法、取り組みに成ります。

 

*野球、相撲、スキー等パフォーマンスの高いトップ選手の多くは重心位置の高い美しい姿勢をしています。

 

*身体を硬くして本来の身体重心位置を下げパフォーマンスを低下させてしまう様な間違ったトレーニングのやり方も有りますので歩行改善やスポーツ競技パフォーマンス向上等が目的の方には注意が必要です。また、筋肉の量やトレーニングで扱える重量その物が増加しても歩行のパフォーマンスや競技力の向上に直結しない場合も多い様です。詳細はトレーナー相星へ直接ご相談下さい。

 

当施設でトレーニングに取り組まれますと皆さん一様に歩行やスポーツ競技でお身体が軽く成ったと感じられる様です。

トレーニングされている皆さんはその感覚が何を意味しているのかご理解に繋げて頂く事は出来ましたでしょうか?

 

ちょっと雑談

 

突然ですが皆さん音楽はお好きでしょうか?

 私はマニアでは有りませんがジャズやロック(今の方達にはちょっと古い音楽でしょうか?)が好きでジムのBGMでも良くかけています。

音楽を聴いていて、同じ曲でも日本人の演奏と欧米人の演奏では何か雰囲気が違うと感じた経験はないでしょうか?

 実は姿勢の違いから来る身体の重心位置の違いで演奏時のリズムの取り方(ノリ)が微妙に違って来るのだそうです。

 身体って面白いですよね。!