動ける身体を手に入れる為に必要不可欠な脳と身体の協調性

(当施設が神経筋制御機能改善にトレーニングでアプローチする理由)

 

 

静的なバランス能力と動的なバランス能力

 

皆さんは歩行動作やスポーツ競技動作で大切と言われているバランス能力には二つの異なる方向性が有る事をご存じでしょうか?

一つはその場に留まり続ける様な静的なバランス能力、もう一つは瞬時に動き出せる様な動的なバランス能力です。

言葉は同じバランス能力でもこの二つの能力は正反対で全く異なる能力です。

 

例えば、片足立ちで靴下を履いたり、片足立ちで静止してタイム計測テスト、バランスボールの上で落下せずにバランスを取り続ける等で要求されるのはその場に留まり続ける為の静的なバランス能力です。

一方、歩行でつまずいた時に瞬時に足を踏み出し着地して新たなバランスを拾ったり、陸上競技のスプリント種目のスタートで予備動作なく瞬時に飛び出す、サッカー競技で足から足へ素早くボールを回す等で要求されるのは動的なバランス能力です。

 

突然ですが皆さんその場で立ち上がってお辞儀をして見て頂けますでしょうか?

頭を下げているタイミングでご自身のお尻の動きに注目して下さい。

如何でしょうか?

無意識にお尻が身体の後方へ下がる事にお気付きに成るかと思います。

お辞儀で頭部が前方に傾く時に頭部や胸郭周辺(肋骨周辺=上半身の重心)の重みで身体が前方に倒れたり移動する事を防ぐ為に、骨盤周辺や大腿部(下半身の重心)を後方に移動させてバランスを取り、その場に留まり尚且つ倒れない様にする為の無意識下の神経系統(脳を含む)の働きによる身体の反応です

(*私達人間の身体は反射や自律神経の働き等無意識下の神経系統の働きにより多くの領域(器官や臓器の働き等)でコントロールされています)。

 

当施設でトレーニングをして頂きますと、その場に留まる様なバランス能力が向上したと言う様なお話も沢山頂くのですが、その場に留まり続ける様なバランス能力はそれに特化してトレーニングをしてしまうと、トレーニング方法にもよるのですが、多くの場合身体が緊張してその場に留まり動けなく(移動出来なく)成る傾向に有ります。

歩行動作やスポーツ競技動作の主な目的は基本的に身体の移動です。

トレーニングではその移動の質や効率を高めなければ成りません。

その様な性質上、その場に留まり続ける様なバランス能力のご説明はまた別の機会にさせて頂ければと思います。

 

(スポーツや理学療法を指導される立場の方達の間では、身体バランスと動作の関係を重心線⦅重心位置を通る重力線⦆、支持基底面⦅身体を支える地面に接している足裏を含む部分⦆、床反力ベクトル⦅支持基底面上から返って来る地面反力の力の方向⦆等と神経系統との係わり⦅反射等=無意識下の神経系統の働き⦆の中でご説明される事が有りますが、一般の方達にとってはお話が複雑に成ってしまいますので今回は省略させて頂ければと思います/トレーニングに関する専門的なご質問はトレーナー相星へ直接お問い合わせ下さい)

 

 

身体の歪みに起因する脳や神経系統と身体の対立

 

結論から先に申し上げますと、立位姿勢で骨盤後傾や反り腰の様に頭部がお辞儀動作の様に身体(身体合成重心を通る重力線=重心線)の前方に出てしまっている様な姿勢、また立位姿勢で身体の正面から見て足関節(外くるぶし=足底の薬指のライン)が股関節の位置より身体の内側へ入ってしまっている様な多くの方に見られる下肢のアライメント(形)では、動作する為に重心移動で身体を前方へ倒したり片足立ちに成った瞬間に、身体バランスと神経系統(脳を含む)との関係により、お辞儀動作でその場に留まり続ける事と同様な制御が瞬間的では有りますが無意識に身体に働いてしまう事に成ります(姿勢反射等の働き⇒筋肉を緊張させて身体をその場に留めてしまう)。

 

身体を移動させる為には神経系統が再び目的(身体の移動)とする制御を身体に入れ直さなければ成りません。

身体の移動(脳や神経系統による動作の制御)には足裏の圧感覚センサー(足裏の荷重位置を感じ取りその情報を脳へ送る為のセンサー)が大きく係わっていますので神経電気信号が足裏と脳の間を再度往復する事に成ってしまいます。

神経電気信号が神経回路を伝わる速度は秒速120メートルとも言われていますが、僅かの時間ですが動作が遅れてしまう事に成ります。

制御の入れ直しで動作に時間が掛かってしまうと意識が介入し、感情や思考⦅例=歩行動作で有ればつまずき時の転倒等に対する恐怖、スポーツ競技動作等で有れば失敗を意識しての迷いや不安等⦆が働き動作に影響を及ぼす事も少なく有りません。

その様な場合、身体の反応時間は更に遅れ、場合によっては身体が緊張し一時的(瞬間的)にその場から移動出来なく成ってしまいます。

 

以前歩行の倒立振子理論のお話しでご説明させて頂きましたが、歩行動作やスポーツ競技動作の主な目的は基本的に身体重心位置を重力を利用して下方向へ移動(加速運動)させる事ですが、骨盤後傾や反り腰の様な身体の姿勢、また立位姿勢で身体の正面から見て股関節より内側に足関節(外くるぶし=足底の薬指のライン)が位置する様な下肢のアライメントでは、多くの場合動作の始まりで重心位置は一旦上方向に持ち上げられて(減速運動)後、目的とする下方向への移動(加速運動)を開始する事に成ります(お話が複雑に成りますのでメカニズムの詳細は省略させて頂きます)。

対人、またはタイム計測等で争われる様なスポーツ競技では、予備動作を行う事なく身体を瞬時に移動(加速運動)させたいのですが、その様な動作は意識に反して困難と成ってしまいます。

 

姿勢や下肢のアライメントの歪みが生じますと、以上の様な非効率が様々生まれ、お身体の状態により差は有るかと思われますが、動作の開始が遅れたり、動作スピードが遅く成る傾向に有ります。

ご高齢の方のつまずき時の転倒回避や(つまずかない様な歩行動作を獲得する事が基本ですが、つまずきの様なミスは誰でも起こしますので瞬時にその場を離れ⦅移動し⦆新しいバランスを拾える様な動作の獲得も非常に重要です)、対人またはタイム計測等で争われる様なスポーツ競技等では結果に影響を与え得る反応時間やスピードの遅れが生まれる事に成ります(この辺の反応時間やスピードの遅れが動作に対してどの程度影響しているかと言う部分は、ご自身の身体を使ってトレーニングをされ、歩行改善やスポーツ競技パフォーマンスの向上等に取り組んで頂かないとご理解して頂けない部分かも知れません=机の上の勉強⦅知識⦆だけでは実感が伴わずご理解が難しい部分です)。

 

動作の始まりで身体がその場に留まり固定される様な神経系統の制御が働く姿勢や下肢のアライメントでは、歩行動作やスポーツ競技動作で必要とされる空間認識能力を働かせ、自己と対象との位置関係を正しく把握する事も難しい作業と成ります(空間認識能力が必要とされるタイミングで身体がその場に留まろうとして揺らぎながらバランスを取っている為、自己と対象との距離が一定せず微妙に変化している=バランスボールの上に乗ってバスケットボールでゴール、弓道で的を狙う様なイメージ=野球でピッチャーが投じる時速150キロを超える様なボールにバットを合わせ狙った方向へ打ち返す、ボクシングや格闘技でスピードの速い相手の動きにカウンターパンチを合わせる等の高度なスポーツ競技技術はより難しい物と成ってしまいます)。

 

トレーニングにより神経の緊張を緩め身体の歪みを整える

 

姿勢や下肢のアライメントの歪みを作り出している原因には、神経系統の働き(緊張)が大きく影響をしています。

特に無意識下の神経系統の働きが大きく影響をしていますので、ご自身の意識で能動的に矯正して(整えて)頂く事は通常は容易な作業では有りません(通常行われている能動的な⦅自身の力で筋肉を伸ばす⦆静的ストレッチトレーニング等では難しい部分も多いかと思われます/マッサージ等で筋肉を揉み解しても神経系統の働きにより時間が経つと元の状態に戻ってしまう様な事例も多い様です)。

当施設ではその為の具体的な改善方法(無意識下の神経系統の働き⦅緊張⦆を改善可能な特殊なマシーンを使ったトレーニング)とそれに関連する実践、具体的な技術(身体操作方法)をお伝えしています。

 

トレーニングにより筋緊張が改善され、正しい姿勢や下肢のアライメントを獲得、またそれに近付く事で、長年抱えていた首や肩、膝や腰(ヘルニアや脊椎管狭窄症等)その他身体の痛みが同時に改善される様な事例は非常に多く見られます(令和5年11月現時点で腰痛等身体トラブル改善を目的としてジムへ入会された方の全てがトラブルを改善、また改善へ向かわれています/当施設は医療、また治療施設ではございませんので皆さん驚かれたり不思議に思われる様です*トレーニング効果には個人差があります)。

筋緊張(身体の緊張)が改善された結果、自律神経の働きも改善、調整され、高血圧、血液検査の様々な数値、睡眠障害、片頭痛、基礎体温の低下、お腹の調子、お通じ、その他様々な身体トラブや症状等が改善されて行く事も神経筋制御機能改善にアプローチをするトレーニングの真骨頂、特筆すべき部分です(中には長期に渡って苦しんでおられた重度の鬱症状が改善された様な事例も有りました)。

多くの方々に是非取り組んで頂きたいトレーニング方法です。

 

 

 

 私達人間の身体は無意識下の神経系統の働きにより多くの領域でコントロールされています。

 脳科学の研究結果の表現をお借りすれば、意識は後追いなのだそうです(意識が働く前に脳が先行指令を出し身体は動き始めている/オカルトの様な非科学的なお話しでは有りません)。

 何故後追いなのか?

その理由は未だ明らかにされていないそうです。

今、ジムの東側の窓からは11月上旬の八ヶ岳の姿が見えています。

与え続けた草木は活動を低下させ、分をわきまえた昆虫や動物達は冬ごもりの準備を始める頃でしょうか…

強く働き過ぎるとマイナスに成ってしまう事も多い私達人間の意識。

意識とはいったい何処からやって来るのでしょうか…

 

 

 

*当コラムの文章は各々が小さな違ったテーマを解説しながら実はジグソーパズルの様な繋がりを持っています(一つの解説が他の解説と繋がっていて全体で共通した大きなテーマを構成する様な形式に成っている)。

皆さんそれぞれの視点でジグソーパズルを組み立てる様な感覚で読んで頂けますと堅苦しい文章も面白い??かも知れません。()