縄文遺跡の残る街から未来へ向けて

縄文遺跡の残る街から未来へ向けて

 

(古きを温ねて革新へ至る)

 

当施設が所在する茅野市には、全国に64件しかない特別史跡に指定されている尖石遺跡(縄文史跡)が有ります。

五稜郭跡(北海道函館市)、姫路城跡(兵庫県姫路市)、金閣寺(京都府京都市)、厳島(広島県廿日市市)他、特別史跡は非常に厳選されていて、教科書に出て来る様な物ばかりだそうです。

尖石遺跡が有る八ヶ岳周辺は、縄文時代の遺跡数も全国で1、2を争う程多く、縄文時代中期に於いては日本の中心地で有ったとも言われています。

私の亡くなった父親は、生前八ヶ岳の麓に有った農業研究施設に勤めていた事が有り、職場の農地で出土していた矢尻を、子供の頃に度々貰った記憶が有ります。

 

縄文時代は争い事がなく、長く(約1万年の間)平和な時代が続いていたとも言われています(考古学的にも争いの痕跡が見られないそうです)。

縄文時代の終期から弥生時代に掛けては(弥生時代の始まりは約2300年前と言われています)生活様式が狩猟採集、及び移動する生活から激変したとも言われています。

農耕(稲作)や定住が始る様に成り、食料の備蓄差等から格差(優劣)が生まれ、それ等が原因で争い事等も起こり始めたと言われています。   

 

人は良く社会的な動物だと言われています。

群れを作る動物でも、日本猿は優劣(勝ち負け=強い個体が弱い個体に餌を分け与える様な事はしない)社会を形成し、進化の過程が日本猿より人に近いゴリラでは、優劣の無い(強い個体が弱い個体に餌を分け与える=敗者を作らない)社会を形成しているそうです。

人が社会性の面で、ある意味進化の過程を逆戻りしている現象は、非常に興味深い現象です。

(詳細にご興味がお有りの方は、京都大学の総長を務められ、ゴリラ研究で有名な人類学者の山極寿一先生のご著書等をご参照下さい)。

 

私達人は比較すると言う能力を持っていますが、それは他の生物には見られない能力だそうです。

その事がより以上を求める事に繫がり、現代の急速なテクノロジーの進化や、それ等に因る生活様式の変化に繋がったとも言われています。

 

遺伝子の変異は突然変異、または環境要因や生活習慣の影響等に因り起こると言われていますが、状況下での差こそ有れ、通常は非常に長い時間スケール(おおよそ2万年から数万年単位)で進行すると言われています。

農耕や定住が始る様に成り、生活様式が激変した縄文時代終期から現在に掛けての2千数百年は、人類の歴史全体から見れば極最近の事です。

言い換えますと、私達現代人の持っている遺伝子は、縄文時代以前(狩猟採集生活をしてきたおおよそ700万年近くの間)の生活習慣や小さなコミュニティ(生活集団)にカスタマイズされたままと言う結論が導き出されるそうです

 

テクノロジーの進化やそれ等に因る生活様式の変化に、私達の身体(肉体)や心(脳)の進化は追い付いておらず、当時の小さなコミュニティでは通用していた正義や公平、また貢献(利他)等の心(脳=精神)も、グローバル化が大きく進行し、複雑化している現代の社会構造の中では空回りしてしまう現状が有るそうです。

(テクノロジーの進化に因る生活様式や社会構造の変化と、遺伝子や進化の関係ついてのお話しは、東京大学定量生命研究所教授で生物学者の小林武彦先生のお話しを引用させて頂きました/*考古学的な発見に因り歴史は書き換えられますが、今回のお話しの主旨が大きく変わってしまう様な書き換えは無いと思われます)

 

縄文人は日の出と共に起きて、日の入りと共に寝ていたと考えられています(私達の自律神経の働きやそのリズム等もその様な生活スタイルにカスタマイズされています)。

また、縄文時代は茣蓙(ござ)の様な物は有っても、現在使われている椅子の様な物は無かった(考古学的に発見されていない)様です(猿やゴリラの様に、そんきょやあぐらの様な姿勢で座っていたと考えられています)。

進化や、遺伝子等の面から考えますと、私達人の身体は日が暮れてから長時間活動をしたり、椅子に座る様な姿勢で長時間パソコン作業、また車の運転をする様には身体が出来て(生まれて)いないと言う事が言えるかと思います(長時間椅子に座り顔を下に向ける様な姿勢をとり続ける事で、姿勢が崩れ⦅ストレートネック、猫背、骨盤後傾等の原因⦆腰に負担を掛けたり、臓器の圧迫や下半身を中心とした血流の低下等を招いています)。

 

問題が起こっている本人の身体(肉体)や心(精神)が弱かったり、鍛え方が足りない訳ではなく、身体(肉体)や心(脳)等の内部環境が生活習慣等外部環境の変化に、進化(遺伝子)の関係から適応出来ていない事に問題の本質は有ると言えます(ある意味、私達が今迄受けて来た教育や問題解決⦅努力⦆の方向性を考え直さなければ成らない印象を受けます/*今回のコラムに於ける重要なポイントとさせて頂きます)。

 

当施設はトレーニングジムですので、以上を踏まえ、トレーニングと身体、健康に関連したお話しをさせて頂きます。

 

内部環境(身体⦅肉体⦆や心⦅脳⦆)が外部環境(テクノロジーの進化に因る生活様式や社会構造の変化)に適応出来ず問題が起きている様な場合、考え得る問題解決の方向性は、大きく分けて四つに分かれるかと思います。

 

一つ目は自身を取り巻く外部環境を自身に適合する様に変えてしまう方向性です。

 

日が沈むと共に寝る様な生活は、現代では一部の方を除き難しいでしょう。

あぐら姿勢で茣蓙に座って授業を受けたり、職場でパソコン作業をする事も、非常に勇気が要りそうです。()

自動車を使わない生活も、地方では一部の方を除き難しい様な気がします。

社会構造が複雑に成り、ストレス社会と言われて久しいですが、身近な方でも心の問題から体調を崩される方を多くお見受けします。

反グローバル化へ舵を切る国家が現れたり、スポーツの世界等でも結果(優劣)主義に陥って、本来の目的(徳育等)から離れて行く状況を危惧し、小学生の柔道の全日本選手権大会が廃止される等、社会構造をリセットする様な方向性の動きが出始めてはいます。

しかしながら、それらは個人の力で解決出来る様な、またこの場で語れる様な単純な問題ではございません。

(次の世代の方達の事を考えますと、必ずや必要に成る取り組みで有ろうと、私個人は思っていますが…)。

 

二つ目は、外部環境に抗う方向性が有るかと思います。

 

ここでは腰痛等腰の問題に絞ってお話しをさせて頂きます。

腰にコルセットを装着する。

痛み止めのブロック注射を打つ。

一般的に良く言われている腹筋背筋運動で腰回りをガッチリ固める。

以上は外部環境に抗う方向性の取り組みに当たるかと思われます。

ご経験の有る方も多いかと思われますが、腰にコルセットを装着したり、痛み止めのブロック注射を打っても、自然治癒して行くケースも間々有りますが、根本原因の改善には繋がらず急場凌ぎの感は否めません。

 

一般的に言われている、腹筋、及び背筋運動で腰回りをガッチリ固める様な取り組みも、当施設としては余りお勧めは出来ません。

 腹筋、及び背筋群は体幹部の捻り動作に大きく係っていますので、本来は柔らかく伸ばされる方向性で鍛えたいのですが、硬く鍛えてしまう事で、身体を大きく捻った(振り向いた)瞬間に(例=ゴルフのスイング等)脇腹や腰背部が肉離れを起こしてしまう事等も間々起こります。

 腹筋、及び背筋群を硬く鍛えてしまいますと、全身の連動性の関係で、肩甲骨周辺や股関節周辺の動きにも影響が出て、動きが制限される事に成ります。

肩甲骨及び股関節周辺の動きが制限される事は、日常生活を快適に過ごしたり、高いスポーツ競技パフォーマンスを発揮して頂く上では、様々なハンデ(障害)と成ってしまいます。

 更に専門的なお話しをさせて頂ければ、腹筋、及び背筋群を硬く鍛える事は、呼吸循環器系統の働きや身体のバランス能力、その他様々な能力を低下させる事にも繋がるのですが、そもそも腰に問題が有る様な場合、腹筋、及び背筋運動をする事自体が困難です(*腰回りを筋肉でガッチリ固めますと、身体⦅患部⦆が動き辛く成る為痛みは感じ難く成りますが、根本原因⦅良くない姿勢等⦆の改善には中々繋がりません)。

 

 三つ目は外部環境に適応出来ずに起こって来る問題を、問題が大きく成る以前にその都度取り除き、身体をリセットして(整えて)頂く方向性です。

 

入浴や睡眠、また整体やマッサージに通われたり、ストレッチトレーニングを行う事等がこれに当たるかと思われます。

 当施設で使用して頂いているトレーニングマシーンは、一般的な筋力トレーニング施設に設置して有るトレーニングマシーンと異なる事は、当コラムでも度々お話しをさせて頂きました。

マッサージで外力を加える事と同様な原理を用いて筋肉を解したり、神経的なアプローチで筋肉の緊張を緩めて自律神経のバランスを整えたり、また筋肉のポンプ作用を応用し血流を高めて代謝を促進させて筋組織を柔軟に作り変える等、当施設で使用している特殊なトレーニングマシーンは、身体をリセットする(整える)効果も非常に高く、整体やマッサージへ通う様な感覚でトレーニングをされている会員様も多くいらっしゃいます。

トレーニングでは他人に施術をして貰う整体やマッサージ等とは違い、自身で身体を動かす事で脳や神経系統が学習をしますので(身体に履歴が残る為)、リセットされた良い状態が比較的長く保てる事等も大きな特徴です。

整体やマッサージ等の手技では触れる事の出来ない深層部に有る筋肉(例=大腰筋等)を、動かして解し整えたり出来る事等も、当施設のトレーニングの大きな特徴かも知れません。

一般的に行われているストレッチトレーニング等は、正しいフォーム(姿勢)をとる事や伸ばし加減等が難しく、実施される方の技量に因り効果に大きな差が現れたりもします。  

当施設では、マシーンがそれ等を誘導してくれますので、技量に左右されず、皆さん高い効果を上げられています。

 

 四つ目の方向性は、外部環境(生活様式の変化)に適応出来る様、自身を進化(変化)させる方向性です。

一般的な施設には殆ど見られない、当施設の特徴的な視点かも知れません(一般的な筋力トレーニング施設等では筋力で外部環境に抗う⦅対抗する⦆方向性の視点が多い様に思います=双方のトレーニングの優劣ではなく違いのご説明です)。

 

人が遺伝子の変異に因る進化の関係で、現代の外部環境(生活様式⦅社会構造⦆の変化)に適応出来ていない事は、既にお話しをさせて頂きました。

 しかしながら、人が他の生物と違う点は、遺伝子の変異を待つ事なく、トレーニングに因り自身の身体を進化(変化)させる事が出来る点です。

 

トレーニングに因り身体を外部環境に適応出来る様進化させたい訳ですが、何を持って進化と定義付けるかと言う方向性の問題が生じます。

 

人と他の生物との一番の違い、また身体的な特徴は、直立二足歩行だと言われています。

 直立二足歩行が人の脳の発達や、テクノロジーの進化、及び文化の発展等に繋がった事は疑い様の無い事実です。

 人の最大の特徴で有る直立二足歩行を更に前に進め、現代の生活様式の変化に適応出来る様にする事が、正しい進化の方向性で有ると当施設では捉えています。

 

 ここでは、人の直立二足歩行を更に前に進める為に、人が外部環境(生活様式の変化)に適応出来ていない身体的なウイークポイントは何処に有るのかを考えてみます。

 

人は腰椎(腰の骨)の伸展(前弯=腰が起きる事)を得る事で直立二足歩行へ進化を果たしましたが、胸椎(肋骨の後ろの背骨)は構造的に未だ後弯(後ろ側に曲がっている状態=一般的に言われている猫背の事ではございません⦅ご興味がお有りの方は骨模型等でご確認下さい⦆)したままです。

この後弯した構造が、外部環境(生活様式の変化=椅子に座ってパソコン作業、スマートフォンを操作しながら歩く等々)に誘導されて、ストレートネックや猫背、骨盤後傾等の良くない状態を作り出す大きな要因にも成っています。

以前、当コラムでもお話しをさせて頂きましたが、医療の分野等では人の歩行動作を倒立振子運動に例えた理論で評価をしています。

 倒立振子とは、簡単にご説明させて頂ければ倒れる棒の事です。

 棒はバランスを崩して倒れるだけで、動力(人で言えば筋力)を使う事無く機械(メカ)的な力を生み出します。

 倒れる棒が効率よく、また大きな力を生み出す(出来るだけ動力に頼らず、且つ重力加速度の働きを妨げずに最大限に利用する)為には、重心位置を出来るだけ高く、尚且つ倒れる方向側へ位置させた方が有利です。

 人の身体でご説明をさせて頂ければ、後弯した胸椎を柔らかく伸展(胸が張られた様な状態)させ、胸椎側から腰椎を通じて骨盤位置を引き上げ、重心位置(静止して起立した姿勢では骨盤内の第二仙椎の前方辺り)を身体の前方の高い位置へ配置させる様な方向性です(*一般的に言われている意識的に何処かに力を入れて胸を張る様な姿勢とは全く異なります/当コラムの姿勢について解説した文章をご参照下さい)。

 胸椎の伸展に、人の進化の可能性(余地)が残されていると言う見方も出来るかと思います。

 

胸椎を更に伸展させた姿勢は、物理的な運動能力(機械的なエネルギー効率)が向上する事に留まらず、脳や神経系統(胸椎の伸展に因り頭部の重心位置が重心線上に配置出来る様に成り、脳や神経系統の不随意⦅反射経路⦆と随意の経路の応答の乖離が少なく成る=自動車に例えれば車体の歪みや遊びが少ない自動車は、ドライバーの意のままに反応する事に近いイメージです)及び呼吸循環器系統の働き(胸郭と横隔膜の距離が大きく取れる様に成る事で肺活量が増加、また身体が起き上がる事で、血流に大きな影響を与えている静脈環流の流れを妨げる胸腔内圧等も減らせる)、臓器(お腹)への圧迫を減らせる、頭部を支える首へのストレスが減少し脳の血流を妨げる因子を減らせる、腰椎(腰の骨)や腰回りの筋肉への負担やストレスを減らせる等、その他様々から見ても人にとっては好影響が多く、実現出来れば非常に有利です。

 

日本に於いて、平均寿命と健康寿命との差は、男女共に10年程の開きが有りますが、この差を如何に縮める事が出来るかは、個人及び国家にとっては(医療費の削減や福祉分野の人手不足解消等の理由から)大きな課題です。

 

縄文人の平均寿命は、乳幼児の死亡率が高かった為15歳前後と言われていますが、15歳迄生存出来た人の寿命は30歳前後と言われている様です。

私達現代人の平均寿命とはおおよそ50年以上の開きが有ります。

縄文人の平均寿命を遥かに超えて私達現代人は生きて行く訳ですが、元々後弯している人の胸椎は、年を重ねる毎に外部環境(生活様式の変化)の影響を受けて、増々後弯が進行して行く事に成ります。

胸椎の後弯が大きく成ってしてしまいますと、身体の作りの関係で、骨盤が後傾(腰が丸く成る様な状態)して膝が曲がり(例=O脚等)、立位(立った姿勢)の重心位置は徐々に下がる事に成ります。

重心位置が徐々に下がると言う事は、倒立振子で考えますと、振子の重心位置が徐々に下がり振子として機能し難く成る、詰まり歩行の効率が落ちて徐々に歩き難く成ると言う事です。

最終的に振子(人の身体)の重心位置が一番下がった状態が、俗に言う寝たきり状態です。

 

多くの方が人生の晩年を、何らかの障害を抱えながら他人の手を借りて生きている現状が有る訳ですが(車椅子、及び寝たきり生活等)、健康寿命と真の寿命の差を縮めると言う観点から見ましても、外部環境(生活様式の変化)の影響を受けても後弯(屈曲)が進行せず、常に(今以上に)伸展させる事の出来る柔軟な胸椎を獲得する事が、人の正しい進化、また正しいトレーニングの方向性で有ると当施設では定義付けています。

 

人の身体の構造上、胸椎の柔軟性を引き出し、更に伸展させる為には、肩甲骨周辺や股関節周辺に高い柔軟性や広い関節可動域が求められます。

当施設で使用して頂いているトレーニングマシーンは、全てが特殊で一般的な筋力トレーニングの施設には導入されていない様な物ばかりですが(当施設をサポート頂く会社様が開発された、世界に一台しかない特殊な機構を持つ様な物も存在します)、一般的なストレッチトレーニングや筋力トレーニングのマシーンでは同レベルの高い柔軟性や広い関節可動域を引き出す事が難しい理由が有るからです。

 

 

 

既存の価値観や生き方を問い直す原点として、日本の縄文時代は多くの方から非常に注目を集めている様です。

私自身、生まれも育ちも縄文遺跡が残るこの街です。

私は正直に申し上げまして、自分の事を故郷に思い入れが有る人間だとは思っていませんが(申し訳ございません…⦅汗⦆)、この様な方向性のトレーニングをこの地で発信している事に何か不思議な感覚を覚えます。

 

「人は自分の事が一番分からない」と言う言葉が有ります。

自分の事が知りたくて、先日何十年か振りに尖石縄文考古館を訪ねて見ました…